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地下鉄St. Paul's 駅は、ちょうど寺院の裏側。目の前の白い大きな建物がセント・ポール大聖堂、なのに目印のドームが見あたらない。高さ約111m、幅約74m、奥行き約157m もある大建築なだけに、てっぺんのドームは近づき過ぎると見えないというのがその理由。木造だった旧セント・ポール大聖堂は、1666 年のロンドン大火災ですっかり焼失してしまった。その後クリストファー・レンの設計で35 年の工期を費やして完成したのが今の大聖堂。れんが造りの教会が多いなか、この大聖堂のイタリア・ルネッサンス風の華やかなイメージが際立っている。ただし、ここは英国国教会の教会。カトリック教会ではない。
外観の印象そのままに、内部も壮大にして華麗。入口を入ると、息をのむような美しさを誇る身廊、その北側にはラファエル前派のウィリアム・ホルマン・ハントの絵やヘンリー・ムーアの彫刻なども置かれ、歴史のなかに比較的新しいものも取り入れられている。
直径34m のドームの天井画も圧巻。天井をキャンバスに、ジェームズ・ソーンヒルによる見事な絵が施されている。よく見ると、なにやら虫のように動いているものに気づくはず。ドームにはそこを一周できるギャラリーが設置され、誰でも上れるようになっている。ここは「ないしょ話の回廊Whispering Gallery」と呼ばれており、1981年にチャールズ皇太子と故ダイアナ妃が結婚式を挙げた祭壇や聖歌隊席を見下ろすことができる。ここがないしょ話の回廊といわれるのは、34m も離れた、ドームの反対側にいる人の話し声が、なぜか後ろの壁から聞こえてくることから。うそかホントか試してみて。
さらに頂上へと階段は続くが、ここから先は大人ひとりが通るのがやっとというくらい幅が狭くなる。次に石の回廊Stone Gallery に着き、さらに30m ほど上ると、ドームのてっぺんに付いている塔の付け根Golden Gallery に到達。どちらも外からロンドンを見渡せるようになっており、テムズ河に沿うロンドンの町が一望できる。
もうひとつの見どころは、地下の納骨堂。一番に目に留まるのは、ナポレオン戦争やトラファルガー海戦で活躍したネルソン提督Admiral Nelson、そしてワーテルローの戦いでナポレオンに勝利した指揮官ウェリントン公爵1st Duke of Wellington の記念碑だろう。奥の礼拝堂の右側にはレンの墓もある。意外なほど質素。墓碑銘にはラテン語で「彼の記念碑を見たければ、周りを見よ」と刻まれている。つまり彼の最高傑作であるこの大聖堂自体が彼の記念碑というわけ。